退職後も傷病手当金・出産手当金をもらえる条件(資格喪失後の継続給付)
退職すると健康保険の被保険者でなくなりますが、一定の要件を満たせば傷病手当金・出産手当金は退職後も引き続き受け取ることができます。これを「資格喪失後の継続給付」といいます(健康保険法第104条・第106条)。本記事では共通の前提条件から各給付の要件・注意点を整理します。支給額の計算は各ツールをご活用ください。
両方に共通する2つの前提条件
傷病手当金・出産手当金のどちらの継続給付も、以下2つの前提をどちらも満たす必要があります。
前提① 被保険者期間が継続して1年以上
退職日(資格喪失日の前日)までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること。
- 任意継続被保険者・特例退職被保険者・共済組合員であった期間は含まない
- 転職等で保険者(加入先)が変わっても、1日も空白なく連続していれば合算して1年以上あればよい
前提② 退職日に就労していないこと
退職日(資格喪失日の前日)に就労していない(出勤していない)こと。
- 退職日に出勤してしまうと、この要件を満たさず継続給付を受けられなくなる
- 退職日は有給休暇・休職などで「労務に服していない」状態で迎えることが重要
任意継続への加入は不要
資格喪失後の継続給付を受けるために、任意継続被保険者になる必要はありません。退職前に加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)へ直接申請します。退職後の医療費の自己負担については、任意継続・国民健康保険のいずれに加入するかは別途ご検討ください。
傷病手当金の継続給付
追加要件
退職日に傷病手当金を受けている、または受けられる状態(労務不能で休んでいる)であること+退職後も引き続き労務不能であること
受け取れる期間
支給開始日から通算1年6か月の範囲内(在職中に受けた期間と通算し、その残りの期間)
申請先
退職前に加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)へ直接申請
要件の詳細
共通の前提①②+傷病手当金固有の要件
- 被保険者期間が継続して1年以上(共通前提①)
- 退職日に就労していない(共通前提②)
- 退職日に傷病手当金を受けている、または受けられる状態(退職日も労務不能で休んでいる)
- 退職後も引き続き労務不能であること(就職・就労すると支給されない)
通算1年6か月の考え方
傷病手当金の支給期間は「支給開始日から通算1年6か月」です。在職中に受け取った期間はこの1年6か月に含まれるため、退職後に受け取れるのは残りの期間になります。
例
- 在職中に6か月間受け取っていた → 退職後は残り1年(12か月)分を受け取れる
- 在職中に1年4か月受け取っていた → 退職後は残り2か月分を受け取れる
- 在職中にすでに1年6か月受け取っていた → 退職後は受け取れない(上限到達)
重要な注意:一度回復すると再開できない
資格喪失後の継続給付は、いったん働ける状態になって継続給付を受けられなくなった場合、その後また同じ病気で働けなくなっても継続給付は受けられません。在職中の被保険者であれば、通算1年6か月の範囲内で症状が改善・悪化を繰り返しながら受け取れますが、退職後はこの「再開」ができない点が大きく異なります。
出産手当金の継続給付
追加要件
出産予定日(または実際の出産日)の42日前(多胎妊娠は98日前)が在職中であること
受け取れる期間
産前42日(多胎98日)+産後56日の対象期間のうち、退職後の残りの期間
申請先
退職前に加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)へ直接申請
要件の詳細
共通の前提①②+出産手当金固有の要件
- 被保険者期間が継続して1年以上(共通前提①)
- 退職日に就労していない(共通前提②)
- 出産予定日(または実際の出産日)の42日前(多胎妊娠は98日前)が在職中であること
要件を満たせば、出産手当金の対象期間(出産日以前42日〔多胎妊娠は98日〕+出産日の翌日以後56日)のうち退職後の残りの期間分を受け取れます。在職中は給与が支払われていて出産手当金が支給停止になっていた方でも、退職後に給与がなくなった期間については継続給付として受け取れます。
関連する制度
退職後6か月以内の出産——出産育児一時金も受け取れる場合がある
出産手当金とは別に、退職後6か月以内に出産した場合は、以前加入していた健康保険から出産育児一時金を受け取れる場合があります(継続1年以上の被保険者期間などの要件あり)。
出産育児一時金は出産費用の一時金(所得補償ではない)であり、出産手当金(産休中の所得補償)とは目的が異なる別の給付です。要件を満たせば両方受け取れます。
出産育児一時金を計算する →傷病手当金と出産手当金が同じ期間に重なるとき
同じ期間に傷病手当金と出産手当金の両方の対象になる場合は、出産手当金が優先されます(傷病手当金は支給されません)。
ただし、出産手当金の日額が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が傷病手当金として支給されます。
関連ガイド
退職・離職後にもらえるお金基本手当・高年齢求職者給付金・就業促進手当・教育訓練支援給付金・傷病手当金の継続給付など、退職・離職後に受け取れる給付を横断的にまとめたガイドです。よくある質問
Q. 退職したら傷病手当金はもらえなくなりますか?
A. 一定の要件を満たせば、退職後も引き続き受け取れます(資格喪失後の継続給付)。要件は、①退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること、②退職日に労務不能で就労していないこと、③退職後も引き続き労務不能であること、の3つです。支給される期間は、支給開始日から通算1年6か月の範囲内で、在職中に受け取った期間の残りになります。申請は退職前に加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)へ直接行います。
Q. 退職日に出勤してもいいですか?
A. 退職日に出勤(就労)すると、継続給付の要件を満たさなくなり、退職後に受け取れなくなります。退職日は有給休暇・休職などを利用して「労務に服していない(休んでいる)」状態で迎えることが重要です。退職日の前日まで出勤しており退職日だけ休んでいた場合も、「退職日に就労していない」の要件は満たせます。退職予定がある場合は、あらかじめ加入先の健康保険にご確認ください。
Q. 出産手当金は退職後ももらえますか?
A. 継続給付の共通要件(①退職日までに継続1年以上、②退職日に就労していない)に加えて、出産予定日(または実際の出産日)の42日前(多胎妊娠は98日前)が在職中であることが必要です。これらの要件を満たせば、出産手当金の対象期間(産前42日〔多胎98日〕+産後56日)のうち退職後の残りの期間分を受け取れます。支給額の計算は出産手当金計算ツールでご確認ください。
Q. 任意継続に加入しないと継続給付はもらえませんか?
A. いいえ。資格喪失後の継続給付と任意継続被保険者は別の制度です。継続給付を受けるために任意継続に加入する必要はありません。退職前に加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)へ直接申請します。ただし、退職後の医療費の自己負担(3割など)については任意継続か国民健康保険かで異なるため、そちらは別途ご検討ください。
出典・参考
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「資格喪失後の給付」
- 健康保険法 第104条(傷病手当金等の継続給付)・第106条(出産手当金の継続給付)
免責事項
本記事は一般的な制度の概要をわかりやすく説明することを目的としており、個別の支給可否・支給額を保証するものではありません。継続給付の要件(被保険者期間の通算方法・退職日の就労判定など)の個別判断は、退職前に加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)にお問い合わせください。制度の詳細・申請書類・申請期限は改正により変わる場合があるため、最新の情報は加入先の健康保険の窓口でご確認ください。